2020 エデルマン・トラストバロメーター
中間レポート(5月版):
信頼とCOVID-19パンデミック
新型コロナウイルスによるパンデミックの状況下において、 調査対象国の中で唯一日本のみが政府・企業に対する信頼度が低下
~他の調査対象国が信頼度の記録的な上昇を見せる中、日本は世界の流れに逆行~
エデルマン・ジャパン株式会社(東京都港区、代表取締役:ロス・ローブリー) は本日、世界 11カ国、約13,200 人を対象に実施した信頼度調査「2020 エデルマン・トラストバロメーター 中間レポート(5月版):信頼とCOVID-19パンデミック」(2020 Edelman Trust Barometer Spring Update: Trust and the COVID-19 Pandemic) の日本の調査結果を発表しました。調査は2020年4月15日から4月23日にかけて実施されました。
本調査結果によると、2020年1月(日本では2月)に発表した「2020 エデルマン・トラストバロメーター」の調査結果と比較して、調査対象国の中で唯一日本だけが、政府と企業に対する信頼度がともに低下していることが明らかになりました。新型コロナウイルスによるパンデミックの中、他の調査対象国は信頼度の記録的な上昇を見せており、日本はこの傾向に逆行しています。
信頼度指標「トラスト・インデックス」(国民の自国の政府、企業、メディア、NGO/NPOに対する信頼度の平均値)は、11カ国平均で6ポイント上昇した一方(61)、日本においては2ポイント低下し(40)、信頼度が低下した唯一の国となりました。
◆政府に対する信頼が世界で唯一低下した日本。中央政府よりも地方自治体への信頼が高い傾向に
政府に対する信頼度は、11カ国平均で11ポイント上昇し(65%)、調査史上初めて最も信頼される組織となりました。調査対象11カ国の中で二桁台の上昇を見せたのは、イギリス(24ポイント)、カナダ(20ポイント)、ドイツ(19ポイント)、韓国(16ポイント)、フランス(13ポイント)、メキシコ(12ポイント)の6カ国でした。これとは対照的に、日本では政府に対する信頼度が5ポイント低下し、38%となりました。
こうした信頼の欠如にも関わらず、日本においても他の調査対象国同様、パンデミックの課題に取り組む上で最も期待されているのは政府です。次の各課題に取り組む上で、政府が主導的役割を果たすことを期待していると答えた日本人回答者は、「パンデミックを封じ込める」が73%、「人々を助ける」が75%、「国民に知らせる」が71%、「経済的救済や支援を提供する」が86%、「国を正常に戻す」が82%でした。
興味深いことに、自国の政府に対する信頼度が低い国では、地方の政府がそのギャップを埋めています。日本では、中央政府に対する信頼度が35%であるのに対し、地方自治体に対する信頼度は50%で、中央政府よりも地方自治体のほうが信頼されていることが明らかになりました。この差が最も大きかったのは、アメリカの20ポイントで、続いて日本の15ポイント、フランスの11ポイントでした。また、日本では新型コロナウイルスに関する情報発信においても、首相(35%)よりも地方自治体のリーダー(52%)のほうが信頼されていることが明らかになりました。
日本の回答者の82%が、パンデミック関連の移動制限は合理的かつ適切な措置であると思っており、これは調査対象11カ国の中で2番目に高い数値でした。一方、ウイルスの蔓延を防ぐために個人の健康情報や位置情報を政府に提供することには消極的で、これに賛成すると回答した日本人は44%で、調査対象国の中で最も低い数値となりました。
エデルマン・ジャパンの代表取締役社長、ロス・ローブリーは次のように述べています。「日本は人口規模に比べて新型コロナウイルスの感染者数と死亡者数が相対的に少ないですが、国のリーダーたちはこの点について何の評価も得ていないように思います。それとは対照的に、地方自治体のリーダーがより信頼を得ているのは興味深いことです。彼らのほうが、人々の日常生活にプラスの影響を与える意思決定を行うことができるからだと考えます。」
◆経済再生よりも国民の健康と安全が求められている
新型コロナウイルス対策の規制緩和に議論が移行する中、本調査結果によると、日本人は慎重なアプローチを望んでいることが明らかになりました。政府の最優先事項は、たとえ経済が大きな打撃を受けその回復に長い時間がかかるとしても、できる限り多くの国民の命を守ることであると回答した日本人は76%に上り、調査対象国の中で最も高い数値となりました。一方で、現在の状況は、国民をウイルスから守ることに全力で取り組むことよりも、雇用を維持し経済を再建することの方が重要になりつつあると答えた日本人は24%でした。
◆ビジネスリーダーには積極的な行動が求められている
エデルマンが調査した4つの組織や機関の中で、日本では企業に対する信頼度は最も高いものの、 前回の調査から3ポイント低下し46%となりました。各産業に対する信頼度も、現在企業が直面する課題を反映してか、全ての業界において低下しました。
日本の回答者の60%が、CEOは政府から制約や要求が課されるまで待つことなく、パンデミックへの対応策を発動すべきであると考えている一方で、CEOがパンデミックの危機に対する要求に見事に対応できていると答えた人はわずか13%でした。興味深いことに、世界的企業のCEOが最優先すべきことは、自分の権力とリソースを利用して、支社が所在する国の国民よりも本社所在国の国民を、優先的に援助することであると答えた日本人回答者は3人に1人で、調査対象11カ国の中で最も低い結果となりました。
ローブリーは次のように述べています。「いくつかの注目すべき例外はありますが、日本企業のリーダーたちはパンデミックの最中、そこに傍観者として存在していました。しかし、私たちのデータは、従業員とそのビジネスのエコシステムをウイルスや経済的影響から守るために、彼らが率先して行動することを望んでいることを示しています。多くの人々がビジネスリーダーに『ジャパン・ファースト』のアプローチを期待しているのではなく、自国の利益よりも世界全体の利益に焦点をあててほしいと願っていることに、私は大変勇気づけられました。」
本調査結果では、日本企業は人々の期待に応えておらず、「利益よりも人を優先する」、「従業員の経済状況を保護し、雇用を確保する」、「中小のサプライヤーや事業顧客が、事業を継続できるように援助する」の項目において、企業が非常によく、もしくはよく責任を果たしていると思っている日本人回答者は、平均して6人に1人にも満たないことも明らかになりました。
◆トラディショナルメディアに対する信頼度が上昇
パンデミックの最中、人々はより信頼できる、正確な情報を求めています。日本人のトラディショナルメディアに対する信頼度は6ポイント上昇し(47%)、2018年以来初めて検索エンジンに対する信頼度を上回りました(44%)。
トラディショナルメディアに対する信頼度が高まった一方で、パンデミックの全体像や、それが経済や人々の生活に与えうる影響について、一般人が理解できるように報道を行うことにおいて、メディアが非常によく、もしくはよく責任を果たしていると思っている日本人回答者はわずか18%で、11カ国平均の46%を大きく下回りました。また、パンデミックに関する報道に影響を与えうる政治的・イデオロギー的な偏向を許さないという点においては12%で、こちらも11カ国平均の40%を下回りました。