日本における自国に対する信頼度が、知識層と一般層でこれまでにないほど大きく乖離
男女間における信頼度格差も世界トップレベル
世界 27 カ国、33,000 人以上を対象に実施した第 19 回信頼度調査「2019 エデルマン・トラストバロメーター」(2019 Edelman Trust Barometer) の日本の調査結果を2月26日に発表しました。
本調査結果によると、日本人の知識層と一般層における政府、企業、メディア、NGOに対する信頼度には、調査史上最大の格差があることが明らかになりました(知識層:53%、一般層:37%)。この16ポイントの格差は、一般層がこれまでの調査同様に信頼度が低迷しているのに比べ、知識層においては大幅に上昇している事に起因しています。
また、日本人の約6割が現在のリーダーに対する不信感を持っており(知識層:63%、一般層:60%)、また社会制度に対して不公平感を抱いている(知識層:64%、一般層:63%)のに対し、変化への欲求に関しては、知識層62%、一般層49%と差が見られました。これは、日本人の多くが現状に満足している一方で、医学部入試における女性差別や政治家のLGBT発言に対する抗議運動からも見て取れるように、これまでの慣例に反対する動きも強まっていることを示唆しています。将来への失望感においては、知識層21%、一般層33%とあまり高くはありませんでした。
男女間に信頼の格差。日本は世界トップレベルの男女信頼格差大国
また、本調査では、男女間においても信頼の格差が存在することが明らかになりました。先進国の全回答者において、ドイツ12ポイント、アメリカ11ポイント、日本10ポイントと、男女間の信頼度には2桁もの差があります。日本では、調査対象となる4つの組織や機関のうち、企業以外の政府、メディア、NGOの3つにおいて信頼格差が大きいランキングの上位3カ国に入っており、日本の男女間における自国に対する信頼の格差は世界トップレベルであることが分かりました。
エデルマン・ジャパンの代表取締役社長、ロス・ローブリーは次のように述べています。「知識層における信頼度の上昇は、より情報通のエリート層が、他の先進国で起こる様々な不安要因を目にし、自国と比べることで、日本に対する自信を取り戻したことが原因ではないかと考えます。日本人女性の信頼度が男性に比べて低いのは、働き方改革や管理職比率の男女均等化といった政府の取り組みに対する失望感の表れだと思われます。しかし、職場における男女平等に向けた企業の取り組みに関しては、より多くの女性が前向きに捉えている傾向が見られます。これは、企業が男女共同参画の実現に向けて、リードすべき存在であることを示唆しています」
日本ブランドに対する信頼度が飛躍的に向上
昨今の不安定な世界情勢の中、比較的安定している日本のイメージは、ラグビーワールドカップや東京五輪も相まってか、調査対象国において飛躍的な向上を見せています。日本企業に対する信頼度は、中国では22ポイント、ロシアでは20ポイントもの大幅な上昇を見せています。日本企業に対する世界的な信頼度の上昇は、海外で事業を展開する日本企業にとっての大きなチャンスとなります。興味深いことに、日本企業に対する信頼度が低下したのは、日本においてのみで(2ポイント低下)、これは日本市場で足場を築こうとしている海外ブランドにとっては、大きなチャンスと言えます。また、「自分と家族の経済的な見通しについて、5年後の状況が良くなっている」と答えた日本人回答者は、知識層38%、一般層16%のみで依然として低く、調査対象国の中でも最も悲観的であることが明らかになりました。
最も信頼されている組織は「自分が働いている会社」
ますます不確実性が増す世界において信頼はより身近なものとなり、日本を含めて世界的に自分の雇用主に対する信頼が高まっています。日本の全回答者における組織や機関に対する信頼度は、企業44%、政府39%、NGO38%、メディア35%である一方、「自分の勤務先」に対する信頼度は59%と高く、自分が働いている会社が最も信頼されているという結果になりました。
自分の組織に対する信頼度の高さは、その組織にとってさらなる責任が生じる事を意味します。本調査結果によると、「CEOは政府から変革を迫られるまで待つのではなく、自ら変革を主導するべきである」と答えた日本人回答者は64%で、昨年から11ポイントも上昇しています。CEOが最も前向きな変化を生み出すことができると期待されているのは、「職場における偏見と差別の低減」(50%)、「将来の仕事のための社員に対する適切な研修の確保」(47%)、「職場における同一労働同一賃金の徹底」(40%)でした。
一方で、日本人回答者の46%しか、業界や政治、国や従業員に関する問題に際して、自分の勤務先のCEOから直接話を聞くことが重要と思っておらず、調査対象27カ国平均の71%と比較すると実に25ポイントもの差があることが明らかになりました。ローブリーは次のように述べています。「自分の会社のCEOに対する期待が日本と国外で大きく異なるということは、日本を本拠地とする多国籍企業にとって、2つの違う役割を果たす準備をしなくてはならないことを意味しています」
日本のように特に逼迫した労働市場では、多くの企業が優秀な人材の確保に頭を悩ませています。「2019 エデルマン・トラストバロメーター」は、従業員から信頼されている企業は、そうでない企業に比べて、どれだけの恩恵を受けるかを明らかにしています。日本では、従業員の信頼を得ることができれば、会社に対するアドボカシーは40ポイント、ロイヤリティは40ポイント、エンゲージメントは34ポイント、コミットメントは31ポイントも増えることが分かっています。
エデルマンのCEO、リチャード・エデルマンは次のように述べています。「これは、職場における信頼、すなわち雇用主と従業員の間における新たな約束を意味し、企業には次の4つの行動を取ることが求められています。まず一つ目は、変化をリードすること。社会問題に関心の高い従業員を引き付けるような大胆な目標を設定し、それを事業目標の中心に据える。二つ目は、従業員に権限を与えること。今ある問題に関する情報を従業員と直接共有し、自社のチャネルでの発言の機会を与える。三つ目は、身近なところから始めること。まず、事業を運営する地域社会に良い影響を与える。そして四つ目は、CEOのリーダーシップ。今ある問題について、自分の意見を自ら明確に述べなければならない。スマートな企業は、今後従業員との徹底的な信頼関係を築くことに取り組んでいくでしょう」
エデルマン・トラストバロメーターについて
「2019 エデルマン・トラストバロメーター」は、今年で19年目となるグローバルな信頼度調査です。本調査は調査会社Edelman Intelligenceが、2018年10月19日から11月16日にかけて、一人当たり30分のオンライン調査を実施しました。調査対象は、6,200人の知識層を含む、27カ国約33,000人です。知識層とは、25歳から64歳で、学歴が大卒以上、世帯収入が各国の同世代と比較して上位25%以内、少なくとも週に数回はビジネスや公共政策に関するニュースを見たり読んだりしているか、そうした情報に関心を持っている層を指します。詳細は、https://www.edelman.com/trust-barometer をご覧ください。