エデルマン・ジャパンでは、5月28日(木)に「2020 エデルマン・トラストバロメーター 中間レポート(5月版):信頼とCOVID-19パンデミック」に関するオンラインセミナーを開催しました。世界11カ国、約13,200人を対象に2020年4月15日から4月23日にかけて実施した調査結果を発表し、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが世界各国の政府、企業、メディア、NGOに対する信頼度にどのように影響を与えているのかを説明した後、その結果を踏まえてパネリストの方々とのディスカッションが行われました。

まず、始めにエデルマン・ジャパン、代表取締役社長のロス・ローブリーより、調査結果をご説明しました。最も特筆すべき点は、日本以外の全ての調査対象国では、政府に対する信頼度が、前回調査より大幅に上昇したのにもかかわらず、日本だけが低下していたということでした。

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また、政府に対する信頼が低い傾向にある国では、地方政府に対する信頼度が、中央政府に対する信頼度よりも高い傾向にありました。以下のグラフが示すように、中央政府に対する信頼度と地方政府に対する信頼度で最も差が大きい国はアメリカで、その次が日本でした。アメリカではNY州のクオモ知事を代表に、地方政府のリーダーが支持されていますし、国内でも小池都知事に対する支持率が高まっていることを踏まえると、この調査結果に納得できます。

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その結果を裏付けるように、新型コロナウイルスに関する情報に関して、日本では情報源として、首相よりも、地方自治体のリーダーのほうが信頼できるという結果が出ていました。

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国内における情報源としてのメディアに対する信頼度については、トラディショナルメディアに対する信頼度が前回より高まって、ジャーナリストによる情報源が最も信頼されていることが判明しました。

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その一方で、トラディショナルメディアでの報道の質という点については、国内では厳しく評価されています。パンデミックの全体像を一般人が理解できるような独自調査や報道、政治的・イデオロギー的な偏向のない報道において、メディアが責任を果たしていると感じている人は少数でした。

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こうした結果を踏まえて、パネルディスカッションが行われました。パネリストとして、スローニュース株式会社 代表取締役社長で、スマートニュース株式会社 スマートニュースメディア研究所所長の瀬尾傑さん、イェール大学助教授の成田悠輔さん、ITエンジニア兼マンガ家の千代田まどか(ちょまど)さんが参加しました。

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政府に対する信頼度がなぜこれほどまでに低いのかについて議論がありましたが、その一つとして、瀬尾さんはコミュニケーションの問題について触れられていました。政府からの情報発信において、スポークスパーソンを一人に集約してやるべきだったと述べられていました。クルーズ船の時は加藤厚生労働大臣、途中から西村経済再生担当大臣がやっていましたが、国家的な危機の際には官房長官のポジションの方がやるべきだったのではないかとのご意見を述べられていました。

ちょまどさんは言葉の問題について述べられていました。例えば、「自粛要請」と言われても、その意味がよく分からず、結局個人の裁量に任せられたので、もっと具体的な口調で、リーダーシップをとって欲しかったと言われていました。

変化球的なご意見で面白かったのが、成田さんのコメントでした。平常時でない、国家的存亡の危機の時には、意図的に政府を信頼させないほうが良いんだと述べていました。今回のような疫病の時には自分以外のものに信頼を寄せないようにして、自らの考えで自粛させるようにしたほうがよい。政府はリーダーシップを見せずに、裏ではしっかりやることをやりながら、表ではあえて頼りなく見せるようにしたほうがよいとのご意見でした。

また、国内でトラディショナルメディアに対する信頼が高まっている一方で、偏りのないジャーナリズムに関して厳しく評価されていることについても議論がありました。瀬尾さんは、日本では放送法があることで、メディアに偏りがないことに対する期待値が高いが、現状が違うので不信感を抱いているのではないかと述べられていました。また、日本のメディアは全体像を捉えられるような報道を目指してこなかったので、それができるジャーナリストが育っていないことがそうした評価につながっているのではと言われていました。

成田さんは、アメリカのメディアがかなり偏向していて、むしろそれがデフォルトであると述べつつ、コロナ報道に関する興味深い研究結果を紹介してくださいました。その調査では、コロナ報道をあおって放送した地域と、中立的な放送をした地域とを比較したところ、あおられた地域のほうが死亡者数やその率が少なかったとのことです。つまり、偏りによって人々の命が救われたということがあり、どのようにその偏りをうまくデザインするかが大事なのではないかとのご意見でした。

最後に、今回の調査でパンデミックを通じてポジティブなことが起きるのではと考えている人が6割以上いたことに関して、パネリストの方々がどのように考えているか語って頂きました。

ちょまどさんは、マイクロソフトのナデラCEOが語った「この二か月間で二年間分のデジタルトランスフォーメーションを見た」という言葉を引用しつつ、デジタルトランスフォーメーションをもっと推進してほしいと言われていました。また、東京都の新型コロナウイルス対策サイトがオープンソースで開発されているように、世界中のエンジニアがコロナという共通の目的に対して、みんなで乗り越えていくという動きを継続してほしいと述べていました。

成田さんは、今回をきっかけに、地球という視点から見たときに、自分たちもウイルスっぽい存在であることに気づけるのではないかと述べていました。地球から見ると人体の大きさは、人体と比較した際のコロナウイルスと同じようなサイズ感であり、人間が地球に対してやっている環境破壊はウイルスと同じような困った働きをしていると述べていました。

瀬尾さんは、成田さんのご意見にも関連して、今回の騒動によって、ガンジス川がきれいになったり、中国やインドの大気汚染が改善したりといった環境に良い影響があったので、これを今後保つことができるようになってほしいと述べていました。また、オンライン教育を長期的な視点で発展させて、例えば、教え方が上手な先生の授業をオンラインで見せて、現場の先生はその理解を補うコーチングに徹することで、どこにいても最高の教育が受けられるようになってほしいと期待を語っていました。

セミナーの動画はこちらからご覧頂けます。

エデルマン・ジャパン シニア・アカウント・マネージャー 中田清光