「えっ、PR会社なのにデザイナー?」と思われた方もいらっしゃるかと思いますが、聞き間違いではありません。エデルマンでは伝統的なPRの領域を超えた広報活動を行うために、総勢5名のクリエイティブスタッフを社内に抱えていまして、その中で私はアートディレクションを担当しています。

そんな私が、先日M&Aの記者発表会に行ってきました。通常は、PRコンサルタントだけが立ち会うのですが、今回は自分が発表資料のデザインを担当したため、オーディエンスサイドからどのように見えるのか、実際のオーディエンスの反応はどうかを知りたくて、同席させて頂きました。

記者発表会の内容は日本企業による海外企業の買収・合併に係るものだったので、発表資料も数値的なものを扱う側面が大きかったのですが、マーケットのシェアがどう大きくなっていくのか、他の様々な要素との関係性がどのようになっているのかということをオーディエンスに一目で”掴める”ように視覚化するというところは特に工夫したところでしたが、皆さんの反応は上々で、狙い通りスムーズに内容を飲み込んでいただいているようでした。

どんなに小さなものであれ、世の中に出回るものはきちんとデザインされる価値があり、にも関わらず最近は見た目の強いこだわりのための追加的/装飾的な要素としてしか扱われないデザインに対して憂いを感じていた私としては、記者発表会にいらしていた方々に、デザインの本質の部分を評価していただいたことをとても嬉しく思いました。

ソーシャルメディアを通したコミュニケーションがテキストベースから写真や動画などのビジュアルベースにシフトしていることは既にご存知の通りですが、最近はアニュアルレポートや、今回のような投資家向けの資料など、あまり今までビジュアルが重視されていなかった領域でも視覚的アプローチがトレンドになっています。

少し前にも、Wired.jpなどでマイクロソフト社元最高経営責任者のスティーヴ・バルマーがつくる、「米政府の財政データ」を視覚化する美しきウェブサイトが話題になったことでも判るように、直感的でより素早く理解を促すことができるようデザインされた、例えばインフォグラフィックなどのビジュアルは、限られたスペースと短い時間の中で非常に効率良く情報を伝達します。背景や文脈、関係性といった情報を配色・書体・形状・レイアウトなどのデザイン手法を駆使し、シンプルでコンパクトなビジュアルとして仕立てられたインフォグラフィックは、データからくる透明性・信頼性、ときに驚きとともに強い興味・関心を生み出すものになり、今まで高度なデータに触れる機会のなかった人たちにもリーチする機会を創出しています。

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弊社が実施したファイナンシャル・コミュニティ意識調査(Edelman Financial Community Survey※)によると、ウォール街の機関投資家と個人投資家に限らず、金融市場を追うメディアや証券アナリストも数値にならない情報の可視化を望んでおり、こういった情報は投資家の85%以上の意思決定プロセスの重要な要素であると回答しています。また、迅速に収益情報を得ることは優れた投資判断を下す上で不可欠であるため、分かりやすく、そして、よりクリエイティブで視覚的な方法にて財務データを提示することが今後のスタンダードになると考えており、アニュアルレポートや決算説明資料のような報告様式への採用が増えていくことを望んでいます。

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グローバル化する日本企業にとっても、人種や国籍、言語を超えて円滑なコミュニケーションを目指す上で、きちんとデザインされた視覚的要素はますます重要であるといえます。それもそのはず、人間は五感のうち視覚から得る情報が一番多いと言われているからです。百聞は一見にしかずという言葉通りです。ボーダーレスに通じる情報発信によってオーディエンスとのスムーズな関係構築には視覚的手法(ビジュアルコミュニケーション)が大いに役立つものとなっていくことは間違いないでしょう。

エデルマン・ジャパン シニア・アートディレクター 村山真也