PR会社は何をしている会社なのか?広告代理店とどう違うのかとよく聞かれます。どちらもメディアを使って企業のイメージアップや信頼向上のためのサービスを行うのですが、その手法や業態はかなり異なります。

広告代理店は、新聞やテレビなどの紙面や放映枠を買い取って、企業が宣伝したい商品やサービスを紹介したり、クリエイティブなグラフィックや映像で企業のイメージアップを図ります。

PR会社は、企業が発信したい情報を記者や編集者に伝え、記事として取り上げてもらうよう、社会的意義やニュース性をアピールします。記者や編集者に「これはニュースだ!」とか「これは世の中に紹介する意義がある」と納得してもらわなければ、報道してもらうことはできません。

そのために、メディアや世の中の興味を喚起する企業のメッセージやストーリーを、適切なチャネルで、効果的なタイミングで発信し、消費者の信頼を獲得する――これがPR会社の仕事です。

PRとは、いわば、現代の“語り部”とも言えます。ただ、語り部はコミュニティに伝わる伝承を語り継いできたため、人々に長く受け継がれてきたストーリーは、既に信頼を勝ち得ています。

一方、情報過多の現代の“語り部”にとって、デジタルやSNSを駆使して多様な知識を得ている消費者から、信頼を獲得するストーリーを語るのは、たやすいことではありません。

キーワードはRational, Emotional, Societal

エデルマンの消費者意識調査「ブランドシェア」(2014)によれば、Rational(合理的)、Emotional(情緒的)、Societal(ソサエタル-社会的意義がある)の3つのニーズを満たすことができれば、消費者が企業やそのブランドを推奨・支持することにつながる、という結果がでています。

つまり、私たちPRプロフェッショナルが“語り部”として信頼を得るには、企業の発信したい情報の中で、人々にもたらす合理的な効果やベネフィットを取り上げ、人々の心を揺るがす感動を呼び、社会的にも貢献しているといった要素を強調して、ストーリーを創り上げることが大切です。

先日、「すしざんまい」の社長が、アフリカ・ソマリア沖の海賊にマグロ漁を教え、年間300件の海賊被害をゼロにした、というニュースが、オンラインでもソーシャルでも拡散しました。ソマリア沖でキハダマグロの漁を行うというビジネス(合理性)のためのみならず、自ら乗り込んでアフリカの海賊と直接交渉し(感動)、海賊たちが持続的な生活をできるよう漁を指導した(社会的意義)という、まさに3要素が揃ったストーリーだったからと言えます。正月の初セリで最高値で競り落して派手なパフォーマンスを披露するすしざんまい社長のイメージを一変させました。

企業や団体には、3要素が埋もれているネタが必ずあるはずです。人々に合理性・感動・社会的意義を訴えるストーリーを掘り起し、現代の“語り部”としてのPRプロフェッショナルを、みなさんも目指してみませんか?

エデルマン・ジャパン シニア・アカウント・スーパーバイザー 美坂薫